事業承継

10.事業承継について

現在、中小企業の廃業理由の約4分の1は、「後継者の不在」を理由としているとの調査結
果もあり、従業員の雇用など地域経済における損失、蓄積したノウハウの喪失など、円滑な
事業承継が日本全体にとっての課題であるといえます

事業承継を考える場合、具体的には、
①経営権を誰に引き継ぎ、どうやって経営者に相応しい能力をつけさせるかという人の問題
②生前であれば贈与・売却、亡くなった後であれば相続など、株式をどのように引き継いで
 いくのかという財産上の問題
の両面から対策を行っていく必要があります。

また、税金面でも、有利な制度を利用したり、納税資金を確保するためにも十分な準備が必
要で、突然、事業承継しようとすると、多額の相続税や贈与税を支払わなければならなくな
ります。

後継者が円滑に経営権を引き継ぎ、会社経営に空白期間ができないようにするためにも、経
営者の最後の大仕事として、できれば5~10年かけて準備されることをお勧めします。

当事務所では、事業承継に関する一般的なご相談から、株式・機関設計など具体的アドバイ
ス、定款の変更、各種手続面でのご支援など対応させていただいております。
会社法、商業登記法などの専門家である司法書士にお気軽にお申し付けください。

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 10-1.事業承継の選択肢
 10-2.事業承継のための具体的対策

 

10-1.事業承継の選択肢

事業承継の方法には、大別して、1.親族内承継、2.従業員等への承継(MBO)、
3.M&A等があります。

1.親族内承継
親族内承継は、子供などの親族が後継者となる場合ですが、取引先等から心情的に受け入れ
られやすく、早期の後継者教育、自社株等の事業用資産の集中(贈与、相続など)の面から
も有利になると考えられます。
一方、その後継者が経営者としての資質をもっているかが問題となり、検討する必要があり
ます。

2.従業員等への承継(MBO)
親族内に後継者としての適任者がいない場合に、役員、従業員、取引先関係者など事業に深
く携わってきた信頼できる身近な人を後継者候補として検討することになります。
会社の役員等が株式を買い取って独立するMBO(注)をすることになりますが、その資金を
調達できるかが問題になります。

(注)MBO:Management buyout、経営陣が自ら調達した資金で事業部門や会社を買収
し、株主から経営権を取得すること

3.M&A等
M&Aとは、企業の合併(Merger)と買収(Acquisition)の意味で、一言で言うと、会社
を売り買いすることです。親族内や従業員等に後継者がいない場合には、事業売却も有力な
選択肢となります。
従業員の雇用継続、会社のノウハウの継承の面から利点がありますが、当然のこととして、
売却先企業がみつかるかの問題があります。
会社に技術・営業上の強みがあり、一定の資産・利益が確保されている必要があります。

 

10-2.事業承継のための具体的対策

1.株式の生前贈与
株式を生前贈与する場合、次の事項を検討する必要があります。
①受贈者を誰にするか
②贈与税
③株式の評価額(贈与のタイミング)
④贈与契約書、株式譲渡承認申請書、譲渡承認をした株主総会議事録などの手続面
詳細については、税理士の方ともよく相談する必要があります。

2.株式の遺言による遺贈と相続
株式を、遺言の相続または遺贈により承継をする場合、次の事項を検討する必要があります

①受遺者を誰にするか
②相続税
③遺留分
④定款の定めに基づく相続人に対する株式売渡請求、自己株式の取得など

3.親子間での自社株式の売買
生前贈与ではなく、親から子へ自社株を売買する場合、譲渡所得税、贈与税の関係から、株
式の売却価格などを中心に検討する必要があります。

4.種類株式の活用
株式会社(含む有限会社)では、株式1株あたりの権利(配当・議決権など)は平等で、株
主は持ち株数に応じて権利を行使できるのが原則です。

ただし、定款で定めれば、配当や議決権について、他の株式と異なる株式を発行することが
認められており、この株式を種類株式といいます。

事業承継対策に有効な種類株式としては、
①無議決権株式 
 →経営に関与しない相続人に取得させて、後継者に会社の支配権を集中させることができ
  ます。
②拒否権付株式(黄金株) 
 →普通株式を後継者に譲渡してしまっても、元の経営者(親など)が一定の重大事項につ
  いて拒否できる拒否権付株式をを持ち続けることで、後継者が一人前に育つまでは後継
  者が暴走しないように監督することができます。
③VIP株 
 →後継者の議決権を激増させ、後継者に会社の支配権を集中させることができます。
④剰余金配当優先株式
 →相続人間の公平を確保するため、経営に関与しない相続人に、議決権を制限する代わり
  に利益配当面で優遇させることができます。

5.貸付金の資本金への振替
自分が経営する会社に、資金繰りのため個人的資金を貸し付けていて返済予定がない場合、
資本金の増資に充当(債権の現物出資)した方が有利な場合があります。

相続税の計算において、株式の方が貸付金よりも評価減の効果を受けやすくなったり、また
、貸付金はその名のとおり、会社にとってはいつかは返す義務のある債務ですので、会社経
営に関与しない相続人が返せと要求すれば、会社は返さなければならなくなります。

資本金への振替は、自己資本充実の観点からも検討すべきでしょう。

6.機関設計など会社の体制
後継者のイエスマンだけの取締役・株主だけが、会社にとってよいこととは限りませんが、
やはり、機関設計・株主総会の決議要件・役員の任期・役員の人選などは、後継者にとって
ベストの体制を考えるべきでしょう。

実際に変更する場合、会社の機関、役員の任期などは、会社法に規定されており、また、定
款記載・登記事項ですので、会社法・登記などの手続面をしっかり対応していく必要があり
ます。

【事業承継に関する費用】

【費用】 消費税込み
相談料 \5,500     (1時間)
\22,000/月  (継続的相談の場合)
報酬(株式・機関設計の調査助言) \11,000~
報酬(変更登記) \11,000~
\16,500~  (増資の場合)
\33,000~  (種類株式の発行)   
登録免許税 \30,000
\10,000  (役員変更で資本金が1億円未満の場合)
見直し後定款、議事録等作成 \5,500~